この日記は全てノンフィクションであり、登場する人物・団体名などは全て実在のものです。
9月
9月28日(水)雨
(尾崎紅葉風 その1)

勤めのありし妻の負担を軽くせんとて、我毎週水曜日に厨房に立つこと久しきなり。己が好みもありければパスタを作ること多かりしも、けふはきのこを使いて和風にせんとて、仕事の帰りに数多きのこを贖いて帰宅せり。
昨日からの雨未だに降りやまず時にいと激しければ、下拵えを済ませて後、妻を迎えに車を出せり。

「けふは殊にお腹がすきましてよ。」

妻は助手席にて疲れた様子で言いけり。

「君、けふはすこし趣向が違うから是非楽しみにしたまえ。」
「まぁ、左様ですか。楽しみですこと。」

街は雨のために渋滞しけり。そのために空腹はいや増しにけり。
帰宅してすぐに調理に入りけり。出来上がりたるはしめじ、えのき、えりんぎを使いし和風パスタなり。

「いいお味ですこと。きのこがほんとうにおいしいわ。エリンギの切り方がおもしろいのね。」
「や、失敬だな君。それは帆立だよ。」
「またそんなこと言って。」
「いやそれにしてもきのこといふのはいいものだ。調理は簡単でおいしい。」
「それにカロリーもないわ。」
「味付けには尾道屋さんのだししょうゆを使ったんだが、どんな感じだい」
「それでおいしくなったのね。それにバターの代わりにココナツオイルを使ったのもよかったのよ、きっと。」
「なるほど。そうだな。」

妻の空腹いかばりか、あっという間に平らげてしまいけり。

「わたし、これならもう半分ほど食べることできましてよ。」

普段は少食の妻なりけれども、これより水曜日は多めに作るべしと我は思いけり。
雨はなお降りやまず街の夜景は霞みけり。

「エリンギ」

エリンギの 切り方けふも 笑われて

9月25日(日)晴れのち曇り
午前中は大濠公園でストリート・ワークアウト。最近たまにこれをやる。チャリで大濠公園に行って、池の周りを筋トレしながら一周歩いて、チャリで帰る。これがなかなかいい。大濠公園にはストリートワークアウトができるようにいくつか器具が設置してある。それらを使ってチンニングやディップス、レッグレイズなどをやる。やはり自重トレーニングはかなり効く。それにチャリとウォーキングもあるので有酸素運動も含めて非常に効率がいい。 ちょっと癖になりそう。

最近見たDVD。

「黄金のアデーレ(原題:Woman in gold)」
こういう作品を見ると、美術館にクリムトの絵を見に行く時に感動が倍増する。「黄金のアデーレ」の本物を見る時にはさぞ感動するだろう。

「ターミネーター:新起動/ジェニシス(原題:Terminator Genisys)」
タイムトラベルもののストーリーにおいて別のタイムラインが発生して違う展開になるというパターンをとってしまうと、無限にストーリーは作れるけど内容が薄くなるような気がするんだが……。

「砂上の法廷(原題:The whole truth )」
途中で真犯人わかってしまった。期待したほどのドンデン返しではなかった。

「ルーム(原題:Room)」
ゾッとする作品だったが、モデルになった事件の方がはるかにひどかったことを知ってもっとゾッとした。

「エベレスト(原題:Everest)」
実際にあった遭難事故がほぼそのまま再現されていたが、あまりにリアルでショッキングだった。でも基本的に登山ものの映画は好きだ。

「イミテーション・ゲーム(原題:The Imitation Game)」
エニグマを解読したアラン・チューリングのように、社会のために大いに貢献してもその功績を評価されていなかった人を、映画によって広く世間に紹介しようとする試みは非常に素晴らしいと思う。

次は何を見ようかなと。

「実話の映画化」

観て感動 Wikiで調べて また感動

9月21日(水)晴れ
(夏目漱石風 その3)

妻は火曜日と水曜日の帰りが遅いので、そのどちらかの夕食は私が何か作るということになって以来、ずっと伊太利亜料理ばかり作っていたが、それでは和風や中華の料理をすっかり忘れてしまいそうな気がしたので、今日は久しぶりに麻婆豆腐を作ってみようと思い立った。麻婆豆腐を選んだのには理由があった。 先日、休みの昼にペペロンチーノを作ったのがあまりいい出来ではなかったので、何かおいしいものを作って挽回したい思いから、過去のレシピの中で評判のよかった麻婆豆腐を選んだというのがそれだ。

幸い材料はほとんど揃っていたので、豆腐とひき肉だけを近くのスーパーで買ってきた。妻が帰るまではまだ時間があったが、なにしろ久しぶりの麻婆豆腐なのでレシピを入念に見直した。
ご飯は妻が用意していたので、麻婆豆腐と一緒に作るのは味噌汁とオクラの和え物。味噌汁の具は玉ねぎだけだが、最後に茗荷を入れるように妻から指示されていた。オクラの和え物に使う酢醤油の割合を妻に尋ねると、そういうのは自分の感覚で覚えるものだと言わんばかりに、「適当よ」という答えが多少突き放すような調子で返ってきたので、私なりに「適当」に作ってみた。

周到な準備がよかったのか、思ったほど苦戦せずに料理が出来上がり、妻の帰宅とちょうど同じ時間に出来上がった。妻の反応は上々だった。

「麻婆豆腐は久しぶりね」
「たまに作らないと忘れちまうもんだね」
「もうレシピ見なくても大丈夫でしょ」
「とんでもない。きみ、そんなわけにはいかないよ。僕なんざぁ本当に下手くそだからね」
「冷蔵庫のきのこ入れてくれたのね。おいしいわ」
「エリンギと舞茸は全部入れたよ。えのきは入れなかったけどね」

妻が味噌汁を飲んでも何も言わなかったので、さては濃すぎたかなと私は心配になった。

「味噌汁は濃すぎやしないかい」
「ううん。ちょうどいいわ。おいしくできてるわ」
「そうかい。そりゃあよかった。薄いのはともかく濃すぎるのはどうしようもないからね。味噌を少しづつ入れては何度も味見したよ。いやぁ味噌汁は単簡に見えて難しいもんだね」
「赤みそと白みそを混ぜるともっとおいしくなるわよ」
「なるほど。ぢゃあ次回試してみよう」
「茗荷がきれいに薄く切れてるわね。薄くないと食感が悪くなるから」
「茗荷の切り方をネットで調べてから切ったよ。ははは」

全部きれいにたいらげた妻は満足そうな笑みを浮かべていた。これでペペロンチーノの失敗は挽回できたと私はほっとする思いだった。

「迷い」

足すべきか 足さざるべきか 味噌の量

9月16日(金)晴れのち曇り

今日はI本さんと蕎麦屋で昼飯を食った。I本さん相変わらずのマイペース。

I本さん: 「今日は俺が奢るから何でも食っていいぞ」
ワシ: 「ありがとうございます」
I本さん: 「何食う?」
ワシ: 「じゃぁ天せいろで」
I本さん: 「大盛り?」
ワシ: 「いや、大盛りは無理です。普通でいいです」
I本さん: 「それじゃ足らないって。これもどうだ?ネギとろ丼。これうまいぞ」
ワシ: 「いやいや、そんなに食べれませんて(笑)」
I本さん: 「じゃこれか?かしわ飯。これにするか?」
ワシ: 「いや無理です(笑)」
I本さん: 「それじゃ足らないって」
ワシ: 「じゃあ……天せいろ大盛りで」
I本さん: 「天せいろ大盛りな。よし。じゃぁ俺は天せいろ普通盛りかな」
ワシ: 「え?」
I本さん: 「いや、やっぱり天せいろ大盛りにしよう。でも俺はまずビールだ。そして冷酒だ」

そして天せいろ大盛りを食べさせられることになった。

I本さん: 「最近はどうだ?小説書いてるか?」
ワシ: 「いや、もう全然です」
I本さん: 「忙しいか?俺は最近『海』っていう同人誌に出してるぞ。あそこはいいぞ」
ワシ: 「どんな同人誌ですか?」
I本さん: 「会合もなにも全然ない。たまに何人かで飲むだけ。ははは。何でもいいから作品書いて送っときゃいいんだよ。楽だぞ」
ワシ: 「そうですか」
I本さん: 「どうだ?入るか?会費月2000円だけどな。やっぱり作品を発表する場を持たんとな」
ワシ: 「そうですねぇ」
I本さん: 「次の締切が11月だったかな?30枚ぐらいならすぐ書けるだろ?」
ワシ: 「はぁ、まぁ……」
I本さん: 「よし!そしたら言っとくぞ?新しい同人増えたって言っとくぞ?」
ワシ: 「はい……」

ということで、また同人誌に入ることになった。果たしていいのが書けるだろうか?
I本さんは最近、まほろば賞(全国同人雑誌最優秀賞)を受賞した。日本のあらゆる同人誌の中での最優秀作品に選ばれるなんて想像を絶する凄さだ。そんなすごい人に蕎麦を奢ってもらうなんて、思えば本当に光栄なことだし、本当にあつかましいことだ。

それにしてもI本さんは面白い人だ。こういう朴訥な親分肌の人は嫌いじゃない。表裏がなくいつも本音で正面からぶつかってくる。香椎のNさんもそうだが、ワシはこういうタイプの人たちとなぜか気が合う。自分の気付かないところでそういう人間性に憧れを感じているんだろうな。

「大盛り」

我もはや 大盛りできぬ 天せいろ

9月10日(土)晴れ

今日は姫の誕生日とホワイトデーの週だけ開店する「リストランテ エシェゾー」の日。今回のメニューは以下の通り。

アンティパスト : 鯛のカルパッチョ
プリモピアット : オイルサーディンのパスタ
セコンドピアット : 鶏のもも肉ときのこの煮込み
コントルノ : グリーンサラダ
ドルチェ : 「アセット」のケーキ

これに「トレヴァンビーノ」で買って来たピエモンテ州の白ワインを合わせた。
カルパッチョはいまいちだったが、パスタと煮込みはまずまずいい感じだった。だがまだまだ改善点はあった。



まだまだ下手くそだが、10年後の「リストランテ エシェゾー」では姫をうならせてみようと意気込みだけは持ってる。

「鶏肉」

間違えて 胸肉買って ネタばれて

9月8日(木)晴れ
今日は姫の誕生日なので、自宅の近くにある某中華のお店へ。お店の内装が重厚な大人の空間になっているし、普段は昼にしか行けないようなちょっとお高めの高級店なのでどんなに固い空気かと思えば、お店の人が非常に気さくで、料理人さんと給仕さんで漫才でも始めそうな勢いだったので非常に楽しく食事できた。

姫が「今日誕生日なんです」と言ったから最後のデザートの時にお店の人たちによる素晴らしい歌のサービスがあって、姫は大喜び。





それにしてもここの料理には驚いた。絶対的に今年食べた、いやここ数年食べた中華の中でNo.1。姫の誕生日にいいお店に行けてよかった。

ここは会社からも近いので絶対に中華の御用達にしようと思う。

「おもてなし」

心意気 味にもまさる おもてなし

9月6日(火)晴れ
夜、久しぶりにクラシックコンサートへ。姫のピアノの先生のコンサート。2回目かな?今回はチェロやバイオリンも入ったり、声楽もあったりで非常に楽しめたし、お得感があった。特にソプラノの方の声には聞き惚れてしまった。
音楽を生演奏で聞くというのは、料理で言えば目の前で作られる手作りだ。これに勝るものはない。この一瞬だけ、それも楽器から空気を伝わって耳に入ってきた美しい音の素晴らしさを何に例えることができようか。それが身体になにも反応を起こさないわけがない。クラシックを聞かせたワインがおいしくなったり、植物がよく育ったりするというのも、未だ解明されない法則を秘めた音楽の力というものだろうと思う。
ワシの場合、衣食住の次に必要なのは本と音だな。

「ラスト」

感動の ラストはなぜか ちょっきんな

9月2日(金)曇り
ヘアーショップ ムーヴ」の社長のアドバイスで、筋トレを身体の部位ごとに日を分けてやることにした。それにともなってメニューを大幅に見直し。そして日々のトレーニングの管理用にこれまた社長お勧めの「Fitness Archive」というアプリを導入した。
今までは一回のトレーニングで全身を鍛えていたので時間もかかり疲労も大きかった。これを「胸と腕」、「背中と下半身」、「腹と肩」に分けた。それぞれメニューは4〜5種類。

「胸と腕」
ダンベルプレス
ナローグリップダンベルプレス
ナロープッシュアップ
ダンベルカール
ダンベルリストカール

「背中と下半身」
ワンハンドローイング
ダンベルフロントランジ
ダンベルデッドリフト
ダンベルスクワット

「腹と肩」
サイドレイズ
フロントレイズ
ダンベルアップローイング
アブドミナルロールアウト

後はやりながら調整していこうと思う。
まぁいろいろやったってワシの身体にはなかなか反映しないんだが、やらんよりはいいかなと。

「ため息」

グローブも 二つ破れて まだこれか
鏡の前で ひとつため息

9月1日(木)曇り
どっどど どどうど どどうど どどう
青いくるみも吹きとばせ
すっぱいかりんも吹きとばせ
どっどど どどうど どどうど どどう

ふと嘉助は目をひらきました。灰いろの霧が速く速く飛んでいます。
そして馬がすぐ目の前にのっそりと立っていたのです。その目は嘉助を恐れて横のほうを向いていました。
嘉助ははね上がって馬の名札を押えました。そのうしろから三郎がまるで色のなくなったくちびるをきっと結んでこっちへ出てきました。

(宮沢賢治 「風の又三郎」)

毎年これを読むということは、何かワシにとって心のふるさとのようなものを感じるからだろうか?
優しさと夢と楽しさに包まれていたあの頃。大きなものに守られていたあの頃。猫のように自由なあの頃。
ワシにとっては昭和50年代かな?

「又三郎」

あの頃に 会えた気がする 又三郎