次回更新は12月20日の予定です。
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今週の新規紹介 「しあわせ食堂/Diningかきはち」
家に帰っても晩飯がないという日には、仕事の帰りにどこかで定食を食べたくなります。個人的な都合ですが、大橋エリアにおいしい定食屋さんがあるといいなと思って探していて見つけたのがこのお店です。お店の前に立つと、正面がきれいに半分に塗り分けられているので驚きます。左側の黄色の方には「しあわせ食堂」と書いてあり、右側のオレンジ色の方には「Diningかきはち」と書いてあります。同じ店なんですが、昼は定食がメインの「しあわせ食堂」となり、夜は居酒屋としての「Diningかきはち」となります。とはいえ、夜に行ってもお昼の定食メニューは注文できますので、別に「Diningかきはち」の時間帯でも定食で食事というのは可能です。一般的に食堂と居酒屋というジャンルはどちらも大味なお店が多いです。味よりもボリュームとかお酒の種類とかに重きが置かれていたりしますが、このお店は料理の一つ一つが本当に丁寧に作ってあって味わい深く、がっついて食べたり酒で流し込んだりするには惜しいと感じます。手を抜いてないことがわかる料理は、じっくり味わいたくなりますよね。そういうきちんとした品質でありながら、お値段は一般的な定食屋あるいは居酒屋のそれと変わりません(定食のご飯はなんとお代わり自由!)。実に実に良心的です。おいしいものを安くで食べられるときは誰しもしあわせを感じます。このお店の看板に偽りはありません。

福岡市南区向野2-14-1
050-5594-8345

今週の作品 井上友一郎 「残夢」
昭和15年の第11回芥川賞の候補作になった作品です。井上友一郎という作家が目指すところは本格小説であったわけですが、若い頃に書いたこの私小説のジャンルに入る「残夢」が文壇デビューのきっかけとなったということはある意味ちょっと皮肉かもしれません。作家に限らず芸術家全般そうですが、有名になる時にはこういうことはままありますね。そういう点に留意して頂いてこの作品を読んで頂きたいと思うわけです。なぜならこの傑作を読めば、「あぁこの人は優れた私小説作家だ」と思う人が多いだろうと予測できるからです。彼の目指したものはここにはありませんからご注意下さい。ストーリーは私小説ですからほぼ実体験と言っていいと思います。背景は太平洋戦争前、日華事変が起こった頃のあの不穏な空気に包まれた時代です。主人公は既に結婚していましたが、ふとかつて自分の青春に輝かしく光っていた頃があったろうかと疑問に思い、今からでもそれを味わってみたいという衝動にかられ、友人の勧めるダンスホールに通うようになります。これが要するに失敗と堕落と苦労の始まりです。ここで出会った女性に心を奪われますが、彼女は軽薄な典型的小悪魔でした。主人公のことを一途に愛しているように思わせといて、実は軽く考えている。でもやっぱりどこかに真実があるなと思っているとあっさりと違う方向に歩み出している……という感じで、哀れな主人公は振り回されっぱなしです。そのうち奥さんにも見限られて実家に帰られてしまう。そんな情痴に溺れて足を踏み外した情けない男の話です。作品としては構成も表現もそつがなく、きっちり完成された傑作です。読み終わって続きが気になったら、「夢去りぬ」をどうぞ。
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